もし1ドル160円が130円になったら、オルカンとS&P500はどう見えるか
「株価は最高値を更新した」というニュースを見た日に、証券アプリを開いたら、自分の評価額はそれほど増えていない。むしろ少し減っている。そんな経験はないでしょうか。
投資を始めたばかりのころ、私もこの違和感が分かりませんでした。オルカン(全世界株式のインデックスファンド)もS&P500(米国の主要500社に連動するインデックスファンド)も、円で買えて、証券アプリには円で金額が出ます。だから「自分は円の世界の中だけで値動きしている」と思い込んでいたのです。
実際は違いました。円で買った投資信託でも、その中身はドルなどの外貨で持っている資産です。毎日の評価額は、それを「今日は円でいくらか」と計算し直した数字です。つまり、気づかないうちに為替の影響をそのまま受けています。
この記事では、もし1ドル160円が130円になったら、オルカンやS&P500の評価額がどう見えるのかを、図で分解します。130円は計算を分かりやすくするための仮の置き方で、将来の為替を予想するものではありません。この先どう動くかは、私にも誰にも分かりません。
「基準価額」は、今日の値段を1日1回だけ決めたもの
先に言葉をひとつだけ整理します。
投資信託の値段のことを「基準価額(きじゅんかがく)」と呼びます。これはその投資信託の「今日の値段」で、株のように1日中動くのではなく、1日1回だけ決まります。以降はこの記事でも「値段」「評価額」と言い換えていきます。
この「今日の値段」は、ざっくり言うと次の掛け算で決まります。
海外での株価(ドルなどの現地通貨) × 為替レート(そのお金を円に直すレート)
だから、海外の株価が上がっても、それ以上に円高が進めば、円で見た値段は下がることがあります。株価と為替は、別々に動くからです。
【図1】円で買ったお金は、どこへ行くのか
まず、毎月の積立のお金がどこを通っているのかを見てみます。
※この図は仕組みを説明するための模式図です。手数料や課税など、実際には他の要素も入ります。
大事なのは、入口と出口は「円」なのに、真ん中は「外貨」で持っているという点です。だから、株価がまったく動かない日でも、為替が動けば「円での値段」は動きます。
同じ仕組みを、実際に起きた円高の場面(1ドル163.99円→155.22円)で数字に分解した記事もあります。
「ドル建ての投資信託を買っている」は、少し違う
ここでよくある言い方を、正確にしておきます。
オルカンやS&P500に連動する投資信託を「ドル建ての投資信託」と言う人がいますが、正確ではありません。
- あなたが買っているのは、円で買えて、値段も円で表示される「円建ての投資信託」です。
- ただし、その中身(組み入れている株式など)が外貨建てです。
たとえるなら、海外旅行のお土産です。買ったのは現地の通貨。でも家計簿には「日本円でいくら払ったか」に付け替えて書きます。付け替えるレートは日ごとに違うので、同じお土産でも家計簿上の金額は変わります。
投資信託も同じで、中身は外貨のまま、値札だけ毎日円に付け替えています。「円で買っているから円の世界の中だけで安全」ではない、ということです。
もし1ドル160円が130円になったら
では本題です。もし1ドルが160円から130円になったら、何が起きるでしょうか。くり返しますが、130円は計算を分かりやすくするための仮の数字です。
1ドルが160円から130円になると、同じ1ドルを手に入れるのに必要な円は30円少なくてすみます。外貨を円に直したときの金額は、
130 ÷ 160 = 約0.81
になります。つまり、海外の資産の「円での値札」が、約19%小さくなるということです。
ここがこの記事の一番のポイントです。海外の株価が1ミリも動かなくても、円高がこれだけ進めば、円で見た評価額はおよそ81%に縮みます。株価が下がったわけではありません。値札を付け替えるレートが変わっただけです。
反対に、円安が進んだ場面(1ドル163円台)では、まったく逆のことが起きます。その整理はこちらです。
【図2】値動きを「株の分」と「為替の分」に分ける
円で見た評価額の変化は、「海外での株価の変化」+「為替の変化」の足し引きだと考えると分かりやすいです(正確には掛け算ですが、まずは足し引きでイメージします)。
2つのケースで見てみます。
- ケースA:海外での株価は変わらない(±0%)+ 為替が約19%の円高(−18.75%)→ 円での評価額は約−19%
- ケースB:海外での株価が+23%上がった + 為替が約19%の円高(−18.75%)→ 円での評価額はほぼ±0%
※計算をわかりやすくするための仮の数字です。実際の値動きを示すものではありません。
言いかえると、160円が130円になった分の目減りを株価だけで取り返すには、外貨ベースで約23%の上昇が必要ということです(0.81 を 1 に戻すには約1.23倍が必要だからです)。株価が23%上がっても、円で見たら「やっと元通り」。これが、株高のニュースと自分の評価額がかみ合わない理由です。
【図3】株価と為替、4つの組み合わせ
株価(上がる・下がる)と為替(円安・円高)の組み合わせは、全部で4つです。今の自分がどこにいて、次にどこへ動くと何が起きるのかを整理しておきます。
| 円安(ドル高)へ | 円高(ドル安)へ | |
|---|---|---|
| 海外の株価が 上がる |
追い風が2つ。 円での評価額は 大きく増えやすい |
打ち消し合う。 株の上げ幅しだいで プラスにもマイナスにも |
| 海外の株価が 下がる |
打ち消し合う。 為替の動き幅しだいで プラスにもマイナスにも |
逆風が2つ。 円での評価額は 大きく減りやすい |
※計算をわかりやすくするための整理です。実際の値動きを示すものではありません。
株高のニュースが続いていて、かつ円安も進んでいた時期は、左上の「追い風が2つ」の位置にいたことになります。そこから右下の「逆風が2つ」へ動くと、体感としてはかなり大きく減ったように見えます。ただ、その内訳の多くは為替の付け替えです。
オルカンなら円高に強い、は本当か
「オルカンは世界中に分散しているから円高に強いはず」。そう思う方は多いです。
オルカンは投資先の国は分散しています。ただし通貨で見ると、中身の大半はドルをはじめとする外貨建てで、日本株の比率は数%程度です。円で持っている部分はごくわずかなので、円高のときに「円の部分がクッションになる」効果は限定的です。しかもドル円だけでなく、ユーロ円など他の通貨に対する円高も影響します。
「世界に分散している=為替の影響も小さい」ではなく、「円以外の通貨をまとめて持っている」というのが実態に近い理解です。オルカンとS&P500の性格の違いは、こちらで整理しています。
積み立て中の人と、取り崩す人では、意味が逆になる
同じ円高でも、立場によって意味がまるで変わります。
積み立て中の人にとって、円高は「同じ1万円で、より多くの外貨の資産を買える月」です。仕入れ値が下がるイメージで、これから買う分にはプラスに働きます。
取り崩す人にとって、円高は「円に換えたときの手取りが減る」場面です。同じ量を売っても、受け取る円が少なくなります。
だから、40代でまだ積み立て中の人と、50代後半で数年内に使い始める人とでは、受け止め方が変わります。前者は淡々と買い続ける材料に、後者は「取り崩しを一度に集中させない」工夫の材料になり得ます。
為替を基準に積立額を増減すべきか、という話はこちらで整理しています。
「為替ヘッジありに乗り換えたい」と思ったときに
円高で評価額が減ると、「為替ヘッジありのファンドに乗り換えれば安心では」という気持ちが出てきます。
為替ヘッジとは、為替の影響を打ち消すための仕組みです。円高になっても評価額が為替で振られにくくなります。ただし、打ち消すための費用がかかります。この費用は、日本と海外(とくに米国)の金利差が大きいほど高くつきます。
気をつけたいのは順番です。円安のあいだはヘッジなしで為替の追い風を受け、円高になって評価額が減ってから怖くなって乗り換える。これは、追い風の分だけ値上がりした後に買い直すのと近い構造になり得ます。
どちらが良い・悪いという話ではありません。ヘッジあり・なしは狙いが違う商品です。お伝えしたいのは、「怖くなってから慌てて乗り換える」という動き方そのものが、タイミングを当てにいく行為になりやすい、ということです。
円高は、生活にはプラスに働く面もある
円高には別の顔もあります。円高が進むと、輸入品の値段は下がりやすくなります。ガソリン、電気代、輸入食品、海外ブランドの製品などは、円高のときのほうが家計は楽になりやすいです。
資産の「円での値札」は縮んで見える一方で、日々の買い物はしやすくなる。資産の評価額と生活のしやすさは、円高のときに逆を向くことがある、というのは覚えておいて損はないと思います。
マシマシおやじの体験:8年で円高も円安も通り過ぎた
私は40歳で投資を再開して、インデックス投資の積立を8年ほど続けてきました。その前には、ひふみプラスというアクティブファンドを買って、のちに売却した経験もあります。
この8年の間にも、1ドルが100円前後だった時期と、160円台まで進んだ時期の両方がありました。トランプショックのときは、評価額が一時マイナス100万円になったこともあります。
そのたびに「今のうちに何かしたほうがいいのでは」と考えました。でも、為替を読んで売り買いのタイミングを合わせて、うまくいったことは一度もありません。結局、円高のときも円安のときも、同じ金額を淡々と積み立てているだけです。振り返ると、それがいちばんラクでした。
投資は自己責任です。ここで書いているのは私の考え方で、こうすべきという話ではありません。それでも、「評価額が減った理由の多くが為替の付け替えだった」と分かっているだけで、慌てずにすむ場面は増えると感じています。
まとめ:値札の付け替えと、資産そのものの増減は別の話
- 円で買った投資信託でも、中身は外貨建て。だから為替の影響をそのまま受ける
- 「ドル建ての投資信託」ではなく「円建てだが中身が外貨建て」が正確な理解
- もし1ドル160円が130円になったら、株価が動かなくても円での値札は約81%(約−19%)に縮む
- その目減りを株価だけで取り返すには、外貨ベースで約23%の上昇が必要
- オルカンでも中身の大半は外貨建て。円高への強さは限定的で、ユーロ円なども影響する
- 積み立て中の人には仕入れ値が下がる場面、取り崩す人には手取りが減る場面。立場で意味が逆になる
- 為替ヘッジには費用がかかる。怖くなってから乗り換えるのはタイミングを当てにいく動きになりやすい
- 円高は輸入品の値段が下がりやすく、生活側にはプラスに働く面もある
株価が最高値でも自分の評価額が増えていないとき、その多くは「値札の付け替え」で説明がつきます。資産そのものが減ったのかどうかは、別の話です。ここが分かっていると、為替のニュースに振り回されにくくなります。
投資の順番を最初から整理したい方は、こちらもどうぞ。
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管理人
資産マシマシおやじ
都内会社員・48歳
- 📅 40歳から投資スタート(投資歴8年)
- 👨👩👧👦 子供2人(8歳・5歳)・住宅ローンあり
- 💰 世帯年収:約650万円
- 📊 投資手法:NISA・高配当株
- 🏄 趣味:サーフィン・ラーメン食べ歩き