iDeCoの損得は「入口・出口・コスト」の3か所で決まる【40代・NISA優先派の検討記録】
NISAはやっている。でもiDeCoは「60歳まで引き出せないから」という理由だけで、ずっと手をつけずにきました。マシマシおやじも、正直そのタイプです。
ただ、あらためて調べてみると、iDeCoの損得は「引き出せるかどうか」の一点だけでは決まらないと分かってきました。掛金を出すとき、育てているとき、受け取るとき、それぞれで効き方がまったく違うのです。この記事では、その3か所+資金拘束というコストを整理して、自分がどこを気にすべきタイプなのかを考えてみます。
iDeCoの損得は「入口・出口・コスト」の3か所で決まる
まず全体像です。iDeCoは1つの制度ですが、お金の流れで見ると3つの局面があります。
| 中身 | 効き方 | |
|---|---|---|
| 入口 | 掛金の全額所得控除 | 現役時の税率次第。社会保険料は減らない |
| 出口 | 退職所得控除は年40万円(20年超は年70万円) | 掛金を払っていた期間で決まる。超えた分は1/2にして課税 |
| コスト | 資金拘束・制度変更リスク・口座管理手数料 | 拘束される年数は加入する年齢で決まる |
なお、積み立てている間の運用益が非課税になる点も見逃せません。ここはNISAの非課税と同じ効き方で、運用している期間が長いほど効果が大きくなります。この記事では入口・出口・コストの3か所を中心に見ていきます。
「iDeCoは節税になる」「でも60歳まで引き出せない」という話は、この表でいう入口とコストの2つだけを見ています。以降の章では、あまり語られない出口とコストの中身を中心に見ていきます。
入口:所得控除は税率次第、社会保険料には効かない
iDeCoの掛金は、全額が所得控除(税金を計算する前の所得そのものを減らす仕組み)の対象になります。ここでよくある誤解が2つあります。
1つ目は、「税金も社会保険料も安くなる」という誤解です。所得控除が効くのは所得税・住民税だけで、社会保険料の計算のもとになる標準報酬月額は変わりません。
2つ目は、効き目の大きさです。控除の効果は、その人の現役時の税率(所得税+住民税)に比例します。住宅ローン控除などで所得税がほぼ発生していない方は、所得税側の恩恵が薄くなります(住民税側には引き続き効きます)。
なお、2027年1月拠出分から掛金の上限が引き上げられる見込みです。企業年金のない会社員なら月2.3万円から月6.2万円へ、約2.7倍になります。この改正の詳しい内訳や、対象者ごとの上限額は以前の記事で整理しているので、あわせてご覧ください。
出口:控除枠は「年40万円」、20年を超えると「年70万円」
ここが、この記事でいちばん伝えたいポイントです。まず、似ているけれど別物の2つの言葉を整理しておきます。
iDeCoには「掛金拠出期間」と「通算加入者等期間」という、紛らわしい2つの物差しがあります。
| 用語 | 何に使うか | 数える期間 |
|---|---|---|
| 掛金拠出期間 | 退職所得控除の年数 | 実際に掛金を払った期間のみ。拠出をやめたあとの運用指図者期間は算入されない。60歳以降の拠出も算入される |
| 通算加入者等期間 | 受給開始年齢の判定 | 加入者期間+運用指図者期間。60歳に達する日の前日までの分しか数えない |
この章で使うのは掛金拠出期間のほうです。通算加入者等期間は、この後の「コスト」の章で使います。
税法上、iDeCoの掛金拠出期間は「勤続年数」と呼ばれます。会社員としての勤続年数と同じ言葉なので、混同しやすいところです。受け取り方によって、控除枠の計算根拠になる期間が変わります。
| 受け取り方 | 控除枠の計算根拠 |
|---|---|
| iDeCo単独 | iDeCoの掛金拠出期間 |
| 退職金と同じ年 | 長いほうの期間(通常は会社の勤続年数)+重ならない期間 |
| 年をずらす | それぞれの期間。ただし重複分を調整 |
ネットで「iDeCoの退職所得控除」を調べると掛金拠出期間ベースの説明が、「退職金の退職所得控除」を調べると勤続年数ベースの説明が別々に出てくるため、検索しても混同が解消しにくいところがあります。ここを押さえたうえで、まずiDeCo単独で受け取る場合の枠を見ていきます。
iDeCoを一時金として受け取るとき使えるのが「退職所得控除」という非課税の枠です。この枠は、掛金拠出期間(実際に掛金を払っていた期間)で決まります。拠出をやめて運用指図者として運用だけを続けても、その期間は年数に加わりません。
計算式はこうです。
- 20年まで:払っていた期間1年につき年40万円
- 20年を超えた分:1年につき年70万円
- 下限は80万円
つまり、掛金が年40万円(月3.33万円)を超えると、運用益がゼロだったとしても元本の時点で枠を超えていきます。21年目以降は、分岐点が年70万円(月5.83万円)に上がります。
ここで気づくのが、入口と出口の非対称です。2027年の改正で入口の枠は最大2.7倍に広がりますが、出口の控除枠は年40万円のまま据え置かれています。枠を大きく使えば使うほど、出口で控除しきれない部分が生まれやすくなる、ということです。
とはいえ、枠を超えたら終わりというわけではありません。超えた分は金額を1/2にしてから、ほかの所得と分けて税金を計算する「分離課税」という仕組みが使われます。給与にそのまま上乗せされるより、税負担は軽くなります。「超えたら大損」ではなく「超えた分だけ、軽めに課税される」という構造だと理解しておくと、必要以上に身構えずに済みます。
なお、会社の退職金と同じ年に受け取る場合の枠の調整ルール(いわゆる「○年ルール」)は、2026年1月に基準が変わったばかりで、内容もやや複雑です。この記事では出口の枠の大きさに絞って書き、調整ルールの詳しい仕組みは以前まとめた記事に譲ります。
コスト:拘束年数は加入する年齢で決まる
iDeCoは60歳になれば必ず受け取れるわけではありません。60歳時点での通算加入者等期間が10年以上あって、はじめて60歳から受け取れます。10年に届かない場合は、次のように受給できる年齢が後ろ倒しになります。
| 加入した年齢 | 60歳時点の通算期間 | 受給できる年齢 | 拘束される期間 |
|---|---|---|---|
| 45歳 | 15年 | 60歳 | 15年 |
| 48歳 | 12年 | 60歳 | 12年 |
| 50歳 | 10年 | 60歳 | 10年 |
| 52歳 | 8年 | 61歳 | 9年 |
| 54歳 | 6年 | 62歳 | 8年 |
| 56歳 | 4年 | 63歳 | 7年 |
| 58歳 | 2年 | 64歳 | 6年 |
| 60歳 | なし(別ルール) | 65歳 | 5年 |
なお、この表は現行ルール(60歳時点の通算加入者等期間で受給開始年齢を判定する仕組み)を前提にしています。2026年12月1日の改正では、iDeCoに加入できる年齢そのものが「65歳未満」から「70歳未満」に広がる見込みです。この判定の仕組み自体は改正後も変わりませんが、拠出できる期間が最大70歳未満まで延びることで、拠出を続けて出口の控除枠を増やすという選択肢も広がります。ただし、いったん老齢給付金を受け取り始めると、その後は積み立てを再開できない決まりです。「受け取る」か「拠出を続ける」かという選択も出てくることになります。詳しい制度設計は以前の記事にまとめています。
※60歳以上ではじめて加入した場合は、この表とは別に「加入から5年経過後」に受給できるルールが適用されます。
この表を見ると、2年遅く始めるごとに拘束期間が1年ずつ短くなり、下限の5年に近づいていくのが分かります。ただし、受給できる年齢そのものは上がっていくので、「拘束が短い=得」と単純には言えません。区切りが2年単位なので、たとえば51歳で始めても52歳で始めても、受給できるのはどちらも61歳からです。境目のあたりでは、思ったより差が出ないこともあります。
ここから言えるのは、早く始めるほど拘束は長いけれど出口の枠は育ち、遅く始めるほど拘束は短いけれど枠も小さいという、逆向きのトレードオフだということです。どちらが正解ということではなく、自分がどちらを重く見るかの話だと感じています。
もうひとつのコスト:長く拘束される制度は、ルール変更も引き受けることになる
資金が拘束されること自体とは別に、もう一つ気になっているコストがあります。それは、長期間拘束される制度は、その間に起きるルール変更も一緒に引き受けることになる、という点です。
これは政権や特定の政党への評価の話ではなく、単純な事実として、受給開始年齢や控除の扱いはこれまでも何度か変わってきました。直近では、2026年1月に退職金とiDeCoを同じ時期に受け取る際の調整期間が延長されています。10年、20年という長い期間を制度にあずける以上、その間にルールが変わる可能性そのものは、あらかじめ織り込んでおいたほうがよさそうだと考えています。
こうした「制度に振り回されないために、自分の頭で仕組みを理解しておく」という考え方は、以前読んだ本からも影響を受けています。
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出口の話をすると、「退職金とiDeCoの受け取り順を間違えると数百万円損する」という解説をよく見かけます。ただ、これは誰にでも当てはまる話ではないと感じています。
退職所得控除は、会社の勤続年数でも同じ計算式が使われます。20年までは年40万円、20年を超えると年70万円です。たとえば勤続25年なら1,150万円、30年なら1,500万円、35年なら1,850万円が非課税の枠になります。
退職金がこの枠に収まる方は、控除の枠が大きく余ります。同じ年に退職金とiDeCoの一時金を受け取る場合、控除は最も長いほうの勤続期間をベースに計算し、重ならない期間だけを上乗せする仕組みです。iDeCoの加入期間が会社の勤続期間にすっぽり収まっていれば、枠は結局のところ勤続年数だけで決まります。
さきほど触れた受け取り順の調整ルールは、この余っている枠を、退職金とiDeCoでどう取り合うかを調整するためのものです。言い換えると、枠を使い切らない人にはそもそも関係のない話だということになります。
自分が心配すべき側かどうかを判断するには、次の3つを確認すれば十分だと考えています。
- 勤続年数の見込み
- 退職金の見込み額
- 企業型DCに加入しているかどうか(企業型DCの一時金も、退職金・iDeCoの一時金と合算して控除枠を計算する対象になります)
「受け取り順で大損する」という話は、退職金だけで控除枠を使い切ってしまう方に向けた話です。自分がどちら側なのかを先に確認してから、出口の心配をするかどうかを決めればいいと思っています。
引退時期から逆算すると、加入年齢の「期限」が見えてくる
ここからは、あくまで今のわたし個人の話です。
わたしはSBI証券でNISAの積み立てを続けていて、iDeCoはまだ利用していません。勤続年数は20年を超える見込みですが、勤務先の退職金の規程は正直まだ確認できていません。企業型DCには加入していません。退職金は500万円に届かない見込みですが、これもあくまで今の時点での感触です。
これまでNISAを優先してきた理由は2つあります。1つは資金拘束があること。もう1つは、iDeCoの制度がこれまで何度も変更されてきたことです。長く拘束される制度は、その間のルール変更も一緒に引き受けることになる、というのは前の章で書いたとおりです。
その一方で、今のところ63歳で会社員としての現役を引退し、その後は嘱託として働こうかと考えています。63歳で受け取りたいなら、コストの表に出てきた「56歳で加入すれば、60歳時点の通算期間は4年、受給できるのは63歳」という組み合わせが目に留まりました。
ただ、これは56歳がちょうどいい、という意味ではありません。iDeCoの受給開始時期は60歳から75歳までの間で自分で選べる仕組みなので、48歳で始めても63歳に受け取ること自体は可能です。表の56歳が意味しているのは、「63歳で受け取りたいなら、遅くともここまでに始めないと間に合わない」という期限であって、最適な開始年齢ではありません。
むしろ早く始めるほど、掛金拠出期間が長くなる分、出口の控除枠も大きくなります。そのうえで63歳に受け取るという選択肢もそのまま残ります。この点だけ見れば、早く始めたほうが有利です。
たとえば、今のわたしの年齢である48歳で始めた場合、60歳時点の通算期間は12年、受給できるのは60歳から、拘束される期間は12年になります。56歳開始(拘束7年)と比べると拘束される期間は長くなりますが、掛金拠出期間も長くなり、63歳で受け取るという選択も変わらずできます。
つまり、加入する年齢を決めているのは「いつ受け取りたいか」ではなく、「そこまでの年数、資金が拘束されることに耐えられるかどうか」という別の判断だということです。
正直に書くと、わたしが56歳という数字を口にしているのは、それが最適だと計算した結果ではなく、今すぐ始める踏ん切りがまだついていない、という現状そのものです。「引退時期から逆算する」という考え方自体は有効だと思っていますが、そこから出てくるのは「これより遅いと間に合わない」という期限であって、いつ始めるのが一番得かという答えではありません。
もちろん、56歳という数字も、これで確定というわけではありません。退職金の規程が分かれば、また変わる可能性があります。あくまで「今のところ、こう考えている」という段階です。63歳以降の嘱託期間の収入や働き方についても、まだ具体的には決めていません。
こうした「引退時期から逆算する」という考え方は、老後資金全体をどう見積もるかという話ともつながっています。以前、老後資金の必要額を逆算してみた記事も書いているので、あわせてどうぞ。
60歳以降にどう働くかという点では、こちらの記事でも年金の受け取り方とあわせて考えています。
まとめ
iDeCoの損得は、「60歳まで引き出せない」という一点だけでは決まりません。入口の所得控除は税率次第、出口の控除枠は年40万円(20年超は年70万円)で頭打ち、そして拘束される年数は加入する年齢で決まります。どこが自分にとって効くかは、人によって違います。
わたし自身は、まだiDeCoを始めていません。ただ、引退時期から逆算するという順番で考えたことで、以前より具体的に検討できるようになった気がしています。
加入資格や受給開始時期はiDeCo公式サイト・運営管理機関で、退職金制度は勤務先の規程で、税務については税理士・税務署で、それぞれ必ずご確認ください。投資は自己責任でお願いします。
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管理人
資産マシマシおやじ
都内会社員・48歳
- 📅 40歳から投資スタート(投資歴8年)
- 👨👩👧👦 子供2人(8歳・5歳)・住宅ローンあり
- 💰 世帯年収:約650万円
- 📊 投資手法:NISA・高配当株
- 🏄 趣味:サーフィン・ラーメン食べ歩き