米国株が上がったのにオルカンが下がる理由|円高と基準価額の仕組みを図解
「S&P500は上がったってニュースで見たのに、オルカンの基準価額は下がってる。……え、自分だけ損してる?」
証券アプリを開いてそう感じたことはないでしょうか。株価が上がったと聞いた日に、手元の投資信託がマイナスになっている。この違和感は、投資を始めたばかりの方ほど強く感じると思います。
先に結論をお伝えします。円高が進むと、米国株が上がった日でもオルカンの基準価額が下がることはあります。ただ、長期の積立投資をしているなら、為替が円高になったことだけを理由に積立をやめる必要はありません。
背景には、大きく荒れた為替相場がありました。2026年7月23日、ドル円は一時163.99円と、1986年11月以来およそ40年ぶりの円安水準まで進みます。これを受けて2026年7月30日には日本単独での円買い介入が、翌2026年7月31日(米東部時間)には日米協調による円買い介入が実施されました。協調介入は2011年の東日本大震災直後以来15年ぶり、円買い方向の日米協調に限れば1998年6月以来およそ28年ぶりです。日本銀行は2026年6月16日に利上げを行ったあと、2026年7月31日の会合では政策金利を据え置いています。
そして2026年8月3日、米国のS&P500種株価指数は前日比+1.48%と大きく上昇しました。それでも、手元の基準価額は下がって見えた——。この記事では、その理由を数字で分解したうえで、「今持っている人」と「これから買う人」それぞれが何をすればいいかまで整理します。
結論:円高で基準価額が下がっても、積立継続でOK
円高になると、海外の資産を円に換算した評価額は下がります。すでに投資信託を持っている方にとっては、評価額の減少要因です。
一方で、これから毎月積み立てる方にとっては、同じ金額でより多くの海外資産を買える場面という側面もあります。
円高は「今ある資産」にはマイナス、「これから買う資産」にはプラスに働きやすい。立場によって意味が変わるので、為替が動いたことだけを理由に積立を止める必要はありません。
同じ仕組みは、円安局面ではまったく逆に働きます。1ドル163円台まで進んだ円安局面については、こちらで整理しています。
基準価額は「現地の株価 × 為替」で決まる
海外の株式に投資する投資信託の基準価額は、大きく2つの要素で動きます。
- 現地の株価(米国株なら、ドル建てでの株価)
- 為替レート(そのドルを円に換算するときのレート)
海外の株価が円建てでいくらになるかは、この2つを掛け合わせて計算されます。つまり、株価が上がっても、円高がそれを上回れば、円で見た基準価額はマイナスになるということです。
計算してみると、株価が上がっても円高なら基準価額は下がる
具体的な数字で見てみます。ある日、現地の株価が前営業日比で+1.5%、同じ日に為替が2%の円高に振れたとします。
理解しやすいように単純に足し引きすると、
+1.5%(株価)− 2%(円高)= 約 −0.5%
株価は上がっているのに、円で見るとマイナスです。
ただし、これはあくまで概算です。株価と為替の影響は実際には掛け算になるため、正確に計算すると次のようになります。
(1 + 0.015) × (1 − 0.02) − 1 = 約 −0.53%
どちらで計算しても、結論は同じです。株で得た+1.5%を、為替の−2%が打ち消してしまったという状態です。
【表】株価と為替の組み合わせ4パターン
株価と為替の組み合わせによって、基準価額がどう動きやすいかを整理すると次のようになります。
| 現地の株価 | 為替 | 基準価額への影響 |
|---|---|---|
| 上昇 | 円安 | 上がりやすい |
| 上昇 | 円高 | 株高を円高が打ち消すことがある |
| 下落 | 円安 | 下落を円安が一部打ち消すことがある |
| 下落 | 円高 | 下がりやすい |
「米国株が上がったのにオルカンが下がった」は、表の2行目にあたります。特殊な現象ではなく、仕組み上ふつうに起こりうるパターンです。
なぜ「株価は上がったのに」ズレるのか(タイミングのズレ)
理由はもう一つあります。株価と為替では、基準価額に反映される「いつの数字か」が違うという点です。
株価は前営業日の終値、為替は当日のTTM
海外の株式に投資する投資信託の基準価額は、多くの場合、海外市場の前営業日の終値をもとに計算されます。日本と海外では市場が開いている時間が違うため、その日の海外市場の結果はまだ出ていないからです。
一方、為替レートにはその日に決められるレートが使われます。これは正式には「TTM(対顧客電信売買相場仲値)」と呼ばれるもので、金融機関がその日の基準として決める為替レートのことです。
まとめると、こうなります。
| 反映される数字 | いつの数字か |
|---|---|
| 海外の株価 | 前営業日の終値 |
| 為替レート | その日のTTM |
つまり、株価は「1日前」、為替は「その日」。ニュースで見たS&P500の上昇と、その日に見た自分の基準価額が一致しないのは、このズレが理由です。
2026年8月3日に実際に起きていたこと
2026年8月3日前後の動きを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 動き | どの市場の数字か |
|---|---|---|
| ドル円 | 一時155.22円まで円買い | 8月3日の東京市場 |
| 日経平均株価 | 前週末比 −0.94%(607円安) | 8月3日の東京市場 |
| S&P500種株価指数 | 前日比 +1.48% | 8月3日の米国市場(日本時間8月4日未明) |
ここで注意したいのが、右端の列です。同じ「8月3日」でも、ドル円と日経平均は東京市場の日中の数字、S&P500は日本時間で8月4日未明に確定した米国市場の数字です。この+1.48%が基準価額に反映されるのは、8月4日付の基準価額から。
ニュースの見出しだけを見れば「米国株は大きく上がった日」です。しかし投資信託の基準価額に反映される米国株価は前営業日の数字であり、そこにその日の円高が掛け合わされます。S&P500が+1.48%だったからといって、同じ日の基準価額が同じように上がるとは限らないのは、このためです。
163.99円→155.22円は約5.3%の円高だった
ここで、為替がどれくらい動いたのかを割合で見てみます。ドル円は7月23日に一時163.99円、8月3日には一時155.22円をつけました。
(163.99 − 155.22) ÷ 163.99 = 約5.3%の円高
「約9円動いた」と聞くとピンとこないかもしれませんが、割合にすると約5.3%です。これは株価の1日の値動きとしてはかなり大きな数字にあたります。為替は、株価に負けないくらい基準価額を動かす要因だと実感できるのではないでしょうか。
【今持っている人】評価額は減っても、株数は1株も減っていない
すでにオルカンなどを保有している方にとって、円高は評価額の減少要因です。アプリを開いてマイナスの数字を見れば、気持ちのいいものではありません。
ただ、ここで押さえておきたいことがあります。
減ったのは「円で測った値札」
円高で減ったのは、海外の資産を円に換算したときの金額です。ファンドが保有している世界の企業の株式そのものが、為替の分だけ消えてなくなったわけではありません。
例えるなら、外国で買った品物の値札を円で貼り直したようなものです。品物は同じでも、円で表示した数字は為替によって変わります。オルカンを通じて保有している企業の株数は、円高になっても減りません。
為替は株価と違って往復する
円高・円安は、一方向に動き続けるものではありません。実際、2026年7月23日には163.99円まで円安が進み、その後の介入をきっかけに8月3日には155.22円まで円が買われました。数日単位でも、これだけ行き来しています。
もちろん、将来の為替レートは誰にも予測できません。「いずれ円安に戻る」「元の評価額に戻る」と考えるのは、それはそれで予測になってしまいます。言えるのは、為替は上下どちらにも動く要素であり、今の水準が続くとも限らないということだけです。
評価額が下がったという理由だけで積立額をどうするか、慌てて判断してしまう方もいます。この記事では仕組みの説明にとどめ、積立額を増やす・減らす・止めるをどう判断するかについては、以下の記事で詳しく整理しました。
【これから買う人】円高は「安く買える月」
これから積み立てる方にとっては、円高の意味がまったく変わります。
同じ3万円でも、円高ならより多くのドルに交換できる
イメージしやすいように、毎月3万円をドルに交換すると考えてみます。ここでは株価は考えず、為替レートだけを比べます。
| 為替レート | 3万円で交換できるドル |
|---|---|
| 1ドル=163.99円(7月23日) | 約183ドル |
| 1ドル=155.22円(8月3日) | 約193ドル |
同じ3万円でも、1ドル=155.22円のときは約193ドル、163.99円のときは約183ドル。円高のときのほうが、同じ3万円で約10ドル多く交換できます。
積立額を増やしたわけでも、給料が上がったわけでもありません。為替が円高に動いただけで、海外資産を買うために使える金額が増えているということです。
なお、実際のオルカンは為替だけでなく現地の株価も同時に動きます。これは為替だけを取り出して比較した単純な例であり、「円高なら必ず安く買える」「円高なら必ず得をする」という話ではない点にはご注意ください。
見るべきは評価額だけではなく口数
積立投資では、「評価額がいくらになったか」だけでなく、「何口買えたか」という視点も役に立ちます。
投資信託は、基準価額が下がっている局面では、同じ積立金額でより多くの口数を購入できる場合があります。評価額は日々上下しますが、買った口数は減りません。積み立てを続けている限り、口数は積み上がっていきます。
ただし、口数は為替だけでなく株価の動きにも左右されるため、円高だから必ず口数が増えるとは限りません。それでも、「評価額が減った」という一つの数字だけで判断しないための視点として、覚えておいて損はないと思います。
為替ヘッジ「あり」「なし」の違い
投資信託の中には、為替の変動をできるだけ受けないようにする「為替ヘッジあり」というタイプもあります。
| 為替の影響 | コスト | |
|---|---|---|
| 為替ヘッジあり | 抑えられる | ヘッジコストがかかる |
| 為替ヘッジなし | そのまま反映される | ヘッジコストはかからない |
オルカンやS&P500に連動する多くの人気ファンドは「為替ヘッジなし」で運用されています。円高では評価額が目減りしやすく、円安では評価額が増えやすいという特徴があります。
どちらが優れているという話ではなく、為替の変動を受け入れるかどうかという方針の違いです。
マシマシおやじの実体験:8年間で円高も円安も通過した
私自身、投資歴は8年になります。最初はリーマンショックのときに個別株で損失を出し、一度相場から退場した経験があります。そこから、インデックス投資の積立に切り替えました。
旧つみたてNISAの分だけを見ると、評価額は約290万円、含み益は約180万円です(2026年7月時点)。
※この含み益は2026年7月時点の未確定の評価額であり、売却して確定した利益ではありません。今後の株価や為替によって増減します。
この8年の間には、円安が進んで評価額が押し上げられた時期も、円高で目減りした時期も、どちらも経験しました。そのたびに売り買いしていたら、今の数字は残っていなかったと思います。
だからこそ、日々の為替の動きを予測しようとするのではなく、決めた金額を淡々と積み立てることを大事にしています。
為替を読んで売買することのむずかしさ
「円高のうちに買っておこう」「円安が進みそうだから今のうちに」——為替を読んで売買のタイミングを計りたくなることもあると思います。
ただ、為替の動きを正確に読み切ることは、プロの投資家であっても簡単ではありません。実際、2026年7月末の為替介入も、事前にタイミングを当てられた個人投資家はほとんどいなかったはずです。読みが外れれば、高いタイミングで買ってしまったり、安いタイミングで売ってしまったりすることにもなりかねません。
一方、毎月決まった金額を積み立てる方法であれば、円高の月にも円安の月にも自動的に買うことになり、結果として買うタイミングが分散されます。為替を予測しなくてよいという点で、続けやすい方法だと感じています。
よくある質問
Q. なぜ米国株が上がっても、投資信託の基準価額は下がることがあるのですか?
A. 投資信託の基準価額は、株価と為替の両方を掛け合わせて計算されています。また、株価は海外市場の前営業日の終値、為替はその日のレートというように、反映されるタイミングにズレがあります。株価が上がっていても、円高に振れた分がそれを上回ると、基準価額はマイナスになることがあります。
Q. 為替ヘッジはつけたほうがいいですか?
A. 一概には言えません。為替ヘッジありは評価額の変動を抑えられる代わりにコストがかかり、為替ヘッジなしは為替の変動もそのまま評価額に反映されます。どちらが向いているかは、為替の変動をどこまで受け入れられるかによって変わります。
Q. 円高と円安、どちらが投資家にとって有利ですか?
A. すでに保有している海外資産にとっては、円高は評価額の目減り要因、円安は評価額の増加要因になります。ただし、これから積み立てる人にとっては、円高は同じ金額でより多くの外貨建て資産を買える場面でもあり、一概にどちらが有利とは言えません。
Q. 長期の積立投資では、為替の動きをどう考えればいいですか?
A. 短期的には株価と為替のタイミングのズレで基準価額が上下することがありますが、長期で見れば為替の変動は積立のタイミングを分散させる要素の一つになります。為替を読んで売買のタイミングを計るのではなく、決まった金額を淡々と積み立てる考え方もあります。
Q. 円高のうちに買い増しした方がいいですか?
A. 「円高だから必ず買い増しすべき」というものではありません。買い増しは、余裕資金があるか、自分の投資方針やリスク許容度に合っているかを踏まえて判断するものです。為替がこの先どう動くかは誰にも分かりません。普段どおりの積立を続けるだけでも、十分に一つの選択肢です。
Q. 円高になったら積立を一時停止した方がいいですか?
A. 為替が円高になったことだけを理由に積立を止める必要はありません。むしろ、これから買う分については同じ金額でより多くの海外資産を買える場面でもあります。ただし、生活防衛資金が不足している、家計が苦しいなど、為替とは別の理由で積立額が負担になっている場合は、金額の見直しを検討したほうがよいと思います。
まとめ:今日からやることは3つだけ
① 米国株が上がっても、円高なら基準価額は下がることがある
基準価額は「現地の株価 × 為替」で決まります。さらに、株価は前営業日の終値、為替はその日のTTMというタイミングのズレもあります。ニュースの株価と手元の基準価額が食い違って見えるのは、この2つが理由です。特殊なことは起きていません。
② 「今持っている資産」と「これから買う資産」は分けて考える
すでに持っている分にとって、円高は評価額の減少要因です。一方、これから買う分にとっては、同じ3万円で約183ドルから約193ドルへと、交換できる金額が増える場面でもあります。両方を一緒くたにして「円高だから損」と決めつけると、判断を誤りやすくなります。
③ 為替を予測するより、自分の投資方針を守る
為替の短期的な動きは、プロでも当てられません。当てにいくのではなく、決めた金額を決めたとおりに積み立てる。それが、為替に振り回されずに続けるいちばん現実的な方法だと思っています。
私はリーマンショックのとき、損失に耐えられず一度相場から退場しました。そこから戻るまでに長い時間がかかっています。下がったから売る、が結局いちばん高くついた——これが8年やってきた正直な実感です。
円高で基準価額が下がったことだけを理由に、慌てて積立をやめる必要はありません。今日も明日も、いつもどおりで大丈夫です。
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管理人
資産マシマシおやじ
都内会社員・48歳
- 📅 40歳から投資スタート(投資歴8年)
- 👨👩👧👦 子供2人(8歳・5歳)・住宅ローンあり
- 💰 世帯年収:約650万円
- 📊 投資手法:NISA・高配当株
- 🏄 趣味:サーフィン・ラーメン食べ歩き