残高は共有していた。でも、仕組みは共有していなかった
もし自分が今日いなくなったら、家族はこの証券口座をどう扱えばいいのか。50歳が近づいてきたころから、そんなことをふと考えるようになりました。備えはできているつもりでいたのですが、掘り下げてみると、まだ渡していないものが残っていました。今回はその話を書いておきます。
50歳が見えてきた
投資を始めて8年、気づけば50歳という数字が以前よりも近くに感じられるようになりました。体のことも、年齢なりに気になることが少しずつ出てきています。大きな不調があったわけではなく、その程度の話です。
そんな中で考えるようになったのが、「もし自分が今いなくなったら、妻と子どもはどうするのか」ということでした。縁起でもない話だとは分かっていますが、一度気になり始めると、確認しないままにはしておけない性分です。
保険は手当てしてある
まず思い浮かんだのは保険でした。死亡時に備えて生命保険には入っていて、保障額は1,500万円です。受け取り方は一括ではなく、月々に分けて受け取れる形にしてあります。
一括で大きな金額が入ってくると、使い方を誤ってしまいそうな不安がありました。それよりも、毎月の生活費のような形で決まった額が入ってくる方が、家計としては扱いやすいだろうと考えたからです。保険については、これで一区切りついたつもりでいました。
証券口座も共有しているつもりだった
次に確認したのが証券口座でした。私はNISAで積立投資をしながら、高配当株にも一部を回しています。ブログを始めたのをきっかけに、資産の残高を妻に共有するようになりました。毎月ではありませんが、家計の話をするタイミングで、だいたいの金額を伝えています。
どの証券会社に口座があるかも、妻はちゃんと把握しています。ここまでできていれば、証券口座についても準備は済んだつもりでいました。
でも、妻は一度もログインしたことがない
ところが、改めて考えてみると、あることに気づきました。妻はこれまで、証券口座に自分でログインしたことが一度もありません。残高は知っていても、実際に画面を開いて中身を見たことはないのです。残高を口頭で伝えるとき、私はいつもスマホの画面をそのまま見せていました。妻が自分の手でその画面を開いたことは、一度もなかったのです。
お金の計算が苦手なこともあって、そのあたりは今もすべて私に任せてくれています。任せてもらっていることは、私にとってはありがたいことでもあります。決して投げ出されているわけではなく、お互いに得意な分野を分担しているだけだと理解しています。投資の方針についても同じで、何にどれだけ回すかを決めているのは私です。もともと妻は貯金を重視する考え方の持ち主で、投資を始めるときには家計の話し合いで議論になったこともありました。貯金を大事にするという考え方自体は、まったく間違っていないと今でも思っています。最終的には、私が自分の口座で運用した結果を見せる形で、投資に回す範囲を少しずつ任せてもらえるようになった、という経緯があります。この経緯自体は別の話になるので、ここでは深追いしません。
ただ、ここで気づいたのは、私が妻に渡していたのは数字だけだったということです。残高がいくらか、どの証券会社かという情報は伝えていましたが、その中身がどういう仕組みで動いているのか、なぜこの銘柄や商品を選んでいるのかという部分は、一度も一緒に見たことがありませんでした。数字は共有していても、扱い方は共有していなかったのです。
そしてもうひとつ、もし私が今いなくなったら、妻は自分が選んだわけではない方針を、説明してくれる人がいないまま引き継ぐことになります。もともと貯金派だった妻が、投資という自分では選ばなかったやり方の資産を、理由も分からないまま持ち続けることになるかもしれない。これは、残高を共有していることとは、また別の問題でした。数字を見せることと、その数字がどうしてそうなっているのかを分かってもらうことは、似ているようでまったく違う作業だったのだと、ここで初めて気づきました。
調べてみて分かったこと
それで、証券口座の相続について少し調べてみました。ここから先は、複数の金融機関や専門家の解説で共通して説明されている内容として、あくまで一般的な情報にとどめて書きます。実際の手続きは金融機関によって異なりますし、詳しくは各証券会社の公式情報や税理士・弁護士など専門家への確認をおすすめします。
まず分かったのは、相続の手続きは、亡くなった本人のID・パスワードでログインして進めるものではない、ということでした。考えてみれば当たり前のことですが、本人がすでにいない以上、本人のIDで手続きを進めること自体が想定されていないわけです。むしろ金融機関が名義人の死亡を把握すると、口座はいったん凍結されるのが一般的なようです。凍結された口座は、相続手続きが完了するまでは、相続人であっても売却などの操作はできません。つまり、妻が一度もログインしたことがないこと自体は、致命的な問題ではなかったのです。むしろ、誰も勝手に動かせない状態になっている、という意味では、都合が悪いどころかむしろ安心材料だったのかもしれません。
手続きとしては、相続人が金融機関へ連絡し、所定の届出書を提出するなど、決められた流れを進めていくことになるようです。必要書類や細かい流れは金融機関ごとに異なるとのことなので、実際に直面したときは、その都度確認していくしかなさそうです。
NISAについては、少し特有の事情があるようです。NISAの非課税という扱いは、名義人が亡くなった時点で終了するとされています。NISA口座は名義変更ができないため、相続人がそのまま非課税の状態で口座を引き継ぐことはできず、相続人自身がNISA口座を持っていても、そこへ資産を移すこともできないとのことでした。保有していた資産は、いったんNISA口座から払い出され、亡くなった本人の課税口座を経由して、相続人の課税口座へ移していく、というのが基本的な流れのようです。また、相続人は原則として、亡くなった本人と同じ金融機関に自分名義の口座を用意する必要があるとも説明されていました。
税額の計算方法やその評価の仕方まではここでは踏み込みません。制度の詳細は今後変わる可能性もあるので、正確なところは公式情報や専門家に確認するのが確実だと思います。ここまで分かったことで、少なくとも「妻がログインできない」という不安の半分は解消しました。手続きは私のIDに頼らなくても進められるようになっているからです。
必要なのはパスワードではなく情報
残る半分は、手続きそのものではなく、その手前の話でした。家族に本当に必要なのは、証券口座にログインするためのパスワードではなく、情報そのものだということです。
具体的には、次のようなことだと思います。
- どの金融機関に口座を持っているか
- おおまかに何を、どれくらい保有しているか
- 何かあったとき、まずどこに連絡すればいいか
これだけあれば、たとえ妻が自分でログインしたことがなくても、次に何をすればいいかは分かります。パスワードを共有しなくても、この部分さえ伝わっていれば、最低限は成立するはずです。パスワードそのものを紙に書いて残すという方法は、それはそれで新しいリスクを抱え込むことになるので、選びたくありませんでした。パスワードは今のまま私しか知らない状態にしておき、その代わりに「入り口」の情報だけを渡しておく方が、ずっと現実的だと考えています。
こう考えると、私が最初に不安に思っていた「妻がログインできない」という問題は、実はそれほど大きな問題ではなかったことになります。必要なのはログインする力ではなく、入り口を知っているという状態だったからです。
ブログを書いていたら、勝手に共有が進んでいた
振り返ってみると、こうして資産のことを点検するようになったのも、ブログを書き始めたことがきっかけでした。記事にするために資産状況を整理する過程で、妻との会話も自然と増えていきました。狙って準備したわけではありませんが、結果としてはこれがいちばん効いていたように思います。
ブログを書くことを人に勧めるつもりはありません。多くの人にとって、資産のことをわざわざ文章にする理由はないはずです。ただ、同じように備えているつもりの方には、年に一度でもいいので、家族と資産の話をする機会を作ってみることをおすすめしたいと思います。改まった場でなくても、家計の話のついでに、「口座はここにある」「何かあったらここに連絡して」くらいのことを伝えておくだけで、十分に意味があるのではないかと感じています。話す内容よりも、定期的に話す機会があること自体の方が、大事なのかもしれません。
それでも、いちばん残しにくいもの
手続きの流れは、調べれば分かります。金融機関や連絡先も、紙に書いて残せます。ここまでは、時間をかければ誰でもできることです。
ただ、ひとつだけ、紙に書いて渡せるかどうか自信が持てないものがあります。それは、「なぜ自分がこの形で運用しているのか」という理由の部分です。もともと貯金を重視していた妻にとって、投資は自分で選んだ方針ではありません。今それでも受け入れてくれているのは、私が続けてきた説明と、これまでの数字の積み重ねがあってのことだと思います。
もし相場が大きく下がったとき、妻の不安を支えるのは、残高の数字でも、手続きの手順書でもない気がしています。「これまでこうだったから、今回も長い目で見て大丈夫」という納得感のようなものだと思うのですが、それは私が隣にいて初めて伝わっているものかもしれません。私がいなくなったあと、その納得感だけを紙の上に残すことができるのか、正直まだ分かりません。「なぜこの形にしているのか」という理由の部分こそ、いちばん残しておくべきものなのかもしれない、と今は感じています。
とはいえ、それを文章にして残せば十分なのか、私自身まだ確信は持てていません。理由は、相場の状況や年齢によって、少しずつ変わっていくものでもあるからです。今回、証券口座の準備を点検してみて、パスワードよりも情報が大事だということは分かりました。ただ、情報よりもさらに奥にあるものについては、今のところ、答えが出ないままです。
保険は手当てしました。証券口座の残高も、共有できているつもりでした。それでも、仕組みや理由の部分は、まだ渡せていなかったのだと思います。パスワードを渡す必要はない。でも、渡せていないものが、まだ残っている気がしています。
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管理人
資産マシマシおやじ
都内会社員・48歳
- 📅 40歳から投資スタート(投資歴8年)
- 👨👩👧👦 子供2人(8歳・5歳)・住宅ローンあり
- 💰 世帯年収:約650万円
- 📊 投資手法:NISA・高配当株
- 🏄 趣味:サーフィン・ラーメン食べ歩き