NISA・積立投資

年金は60歳から?65歳から?加給年金も含めて、40代後半から老後の年金受給を本気で考えてみた

ねんきん定期便を眺めていて、ふと手が止まりました。「年金をもらい始めるまで、まだ17年近くあるのか」と。

2026年現在、私は48歳の会社員です(この記事の年齢・年数はすべて2026年時点のもの)。厚生年金にはもう20年以上入っています。原則の受給開始は65歳なので、そこまで約17年。50代が視界に入った途端に急に現実味が出てきて、疑問がいくつも浮かびました。

  1. 年金を60歳からもらうのと65歳からもらうのとで、どれくらい違うのか?
  2. うちは妻が9歳年下。「加給年金」が使えると聞いたが、本当か?
  3. 60歳以降も働くつもりだが、年金をもらいながら働くと減らされるのか?
  4. 資産形成がうまくいっていたら、フルタイムでなく「ゆるく働く」手もあるのでは?

この記事は、その4つを48歳の自分なりに調べ、我が家の数字で試算してみた記録です。制度の数値は日本年金機構など公的な情報で確認しています。ただし前提を一つ。ここに書くのは2026年時点の制度をもとにした試算で、実際に受け取るころには制度も金額も変わっている可能性が高いです。個別の見込み額は必ずご自身のねんきん定期便やねんきんネット、年金事務所で確認してください。


1. 年金は60歳からもらえる?

結論から言うと、もらえます。ただし「原則」ではありません。

老齢年金の受給開始は原則65歳。60〜64歳の間に受け取り始めるのが「繰上げ受給」、65歳より後ろにずらすのが「繰下げ受給」です。

繰上げには大きな代償があります。受け取り始めを1か月早めるごとに0.4%減額され、その減額が一生続きます(昭和37年4月2日以降生まれの場合。それより前は1か月0.5%)。60歳ちょうどまで60か月早めると0.4% × 60 = 24%の減額。老齢基礎年金・老齢厚生年金の両方にかかり、65歳になっても元には戻りません。

減るのはお金だけではありません。日本年金機構のページには、繰上げ請求のあとは①事後重症などによる障害基礎年金・障害厚生年金を請求できなくなる ②国民年金の寡婦年金が受けられなくなる ③65歳になるまで、遺族厚生年金と老齢年金は同時に受け取れず、どちらかを選ぶことになる ④国民年金の任意加入や保険料の追納ができなくなる、と書かれています。減額率だけを見て判断すると、こうした「請求する権利そのものを失う」デメリットを見落とします。

出典:日本年金機構「年金の繰上げ受給」

この0.4%も24%も2026年時点の数字です。過去に0.5%から0.4%へ見直された経緯があり、将来また変わり得ます。


2. 60歳から年金をもらいながら働くことはできる?

「働いていると年金はもらえない」は誤解です。働きながらでも受け取れます。ただし給与が高いと老齢厚生年金の一部が止まることがあります。これが「在職老齢年金」です。

  • 調整対象は老齢厚生年金だけ。老齢基礎年金は対象外で、いくら稼いでも満額出ます。
  • 「基本月額(加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額)」と「総報酬月額相当額(その月の給与+直近1年の賞与÷12)」を足す。
  • 合計が支給停止調整額を超えると、超えた分の半分が止まります。合計が高すぎて年金の月額がマイナスになると、老齢厚生年金は加給年金額も含めて全額支給停止になります。

支給停止調整額は令和7年度が51万円、令和8年度(2026年4月分)から65万円に引き上げられました。以前より止まりにくくなっています。

出典:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」

もう一つ、誤解されやすいのが「65歳を過ぎて働いても年金は増えない」という話。実際には在職定時改定という仕組みがあり、65歳以上70歳未満で厚生年金に加入していれば、毎年9月1日を基準に、その年の10月分(12月受取分)から年金額が改定されて増えていきます。働いた分はちゃんと積み上がります。この基準額も毎年度見直されます。


3. 60歳で年収700万円だったら年金はいくら?

ここから我が家の数字です。前提はこうです。

なお、この年収700万円は「今の年収」ではありません。今のわが家の世帯年収はこれより低く、あくまで「60歳ごろにはこのくらいになっている可能性がある」という将来の仮定として置いた数字です。実際にどうなるかは分かりません。読むときは、ご自身が想定する年収に置き換えて読んでください。

  • 65歳時点の年金見込みは月13万円程度(60歳まで働いた場合の見込み)。内訳は試算上「老齢基礎年金7万円+老齢厚生年金6万円」と仮定。
  • 60〜65歳は年収700万円(月平均給与に直すと約58.3万円)で働く。
  • 65〜70歳は嘱託として年収350万円(同 約29.2万円)で働く。いずれも厚生年金には加入し続ける。

まず、60歳ちょうどで繰上げした場合の「基本の年金」。減額率24%なので、

  • 老齢基礎年金:7万円 × 0.76 = 約5.3万円
  • 老齢厚生年金:6万円 × 0.76 = 約4.6万円
  • 合計:月約9.88万円(年およそ119万円)

これに給与を足すと、60〜64歳は給与700万円+年金約119万円=年およそ819万円(税・社会保険料を引く前の額面)。

在職老齢年金は発動するでしょうか。基本月額は繰上げ後の老齢厚生年金=約4.6万円、総報酬月額相当額は約58.3万円。合計約62.9万円で65万円以下なので支給停止なし。嘱託になる65〜70歳は、基本月額と給与の合計が約35〜37万円まで下がるので、こちらも止まりません。加給年金も全額出ます。


4. ここで気になった「加給年金」とは?

妻が9歳年下と気づいて調べ始めたのが、この加給年金です。

ざっくり言うと「厚生年金の家族手当」。厚生年金にたくさん入ってきた人が65歳になったとき、年下の配偶者がいると、配偶者が65歳になるまで年金に上乗せされます。2026年度(令和8年度)の配偶者加給年金額は年423,700円(本体243,800円+特別加算179,900円。受給権者が昭和18年4月2日以後生まれの場合)。月あたり約3.53万円です。

出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

ただし「9歳下だから必ず9年分」とは言えません。主な要件は次のとおり。

  • 受給権者(私)の厚生年金の被保険者期間が20年以上あること。
  • 65歳になった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者がいること。
  • 配偶者自身が20年以上(中高齢の特例では15年以上)の加入期間にもとづく老齢厚生年金などを受け取る権利がある場合は支給停止。ここが「対象外になり得る」一番の理由です。しかも在職などで実際には受け取っていなくても、受給権さえあれば止まります

我が家では私が65歳のとき妻は56歳。要件を満たせば、妻が65歳になる(私が74歳になる)ころまで、つまり65〜74歳の約9年間が対象になる可能性があります。あくまで可能性で、妻の働き方や年金の受け取り方しだいです。

もう一つ、勘違いしやすい点が二つあります。ひとつは振替加算。「配偶者が65歳になると加給年金は終わり、代わりに配偶者の年金に振替加算が付く」と説明されることがありますが、振替加算は昭和41年4月2日以後に生まれた人はゼロです。妻はそれよりずっと若いので、振替加算は付きません。私が74歳になって加給年金が終わったあと、その穴を埋めるものはない、ということです。

もうひとつは繰上げとの関係。老齢厚生年金を繰上げて60歳から受け取っても、加給年金がつくのは65歳から(65歳到達時点で要件を満たしていれば、その翌月分から)。60〜64歳の間は加給年金は出ません。その代わり、加給年金は繰上げの減額・繰下げの増額のどちらの対象にもならないので、65歳からは満額(約3.53万円)で加算されます。


5. 65歳から年金を受け取るとどうなる?

繰上げをせず、原則どおり65歳から受け取る場合。60歳までの働き方で計算した「基本の年金」はこうです。

  • 老齢基礎年金 7万円+老齢厚生年金 6万円+加給年金 月約3.53万円(要件を満たす場合)
  • 合計:月約16.5万円(税・社会保険料を引く前の額面。以下の章の金額もすべて額面です)

繰上げケース(基本の年金 約9.88万円)との差は月6万円以上。ただし加給年金ぶんは65〜74歳の期間限定で、私が74歳になると消えて月13万円に戻ります(前章のとおり、振替加算による穴埋めはありません)。

そして、この16.5万円はゴールではありません。60歳以降も働けば、在職定時改定で年金はさらに増えます。次の章から、その働いた分も入れて試算します。

年金そのものが将来もらえるのか不安、という人もいると思います。私も昔はそうでした。年金の「お金の中身」を運用しているGPIFの実績を調べたら、少し見方が変わりました。

年金はもらえる?GPIFの運用実績+196兆円が示す答えとNISAでの備え方


6. 「基礎年金だけ繰下げ」という受け取り方もある

制度の小ネタとして、知っておくと選択肢が増える話を一つ。

老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰下げできます。 まとめて後ろ倒しにする必要はありません。繰下げの増額率は1か月0.7%。最大75歳まで繰下げでき、そのとき増額率は84%。70歳まで(60か月)なら0.7% × 60 = 42%の増額です。

出典:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

そこで考えられるのが、「老齢厚生年金+加給年金は65歳から受け取り、老齢基礎年金だけ70歳まで待つ」という形です。70歳からは7万円 × 1.42 = 約9.9万円にふくらんだ基礎年金が受け取れます。なぜ厚生年金を先に受け取るかというと、加給年金は老齢厚生年金にくっついているから。厚生年金を繰下げて待っている間は加給年金を受け取れず、しかも加給年金は繰下げても増額されません。

ただし、この章は「こういう受け取り方もある」という紹介にとどめます。次の章からの試算では、話をシンプルにするため、ケースB=「65歳から基礎も厚生も加給も、ふつうに全部受け取る」で比べます。もし基礎年金だけ70歳まで繰下げれば、70歳以降はさらに月2.9万円ほど(7万円×42%)上乗せになる、と頭の片隅に置いておいてください。


7. 60歳からもらう VS 65歳からもらう

ここまでを2つのパターンで比べます。働き方(60〜65歳は年収700万、65〜70歳は嘱託で年収350万、いずれも厚生年金に加入)は両ケース共通です。

  • ケースA:60歳から繰上げ受給(基礎・厚生とも24%減)
  • ケースB:65歳からふつうに受給(繰上げも繰下げもしない)
項目 ケースA
60歳から繰上げ
ケースB
65歳からふつうに受給
年金開始 60歳(基礎・厚生とも24%減) 65歳(減額なし)
60〜65歳の年金 約9.88万円 0円(給与で生活)
65〜70歳の年金 約14.87万円 約18.45万円
70〜74歳の年金 約15.60万円 約19.41万円
74歳〜の年金
(加給年金の終了後)
約12.07万円 約15.88万円
A・Bの差 Bが月 約3.58〜3.81万円 多い(生涯続く)
加給年金 65〜74歳のみ 月約3.53万円(60〜64歳は出ない・減額なし) 同左
在職老齢年金 発動しない(60〜65歳の合計 約62.9万円<65万円) 発動しない(嘱託期の合計 約35〜37万円<65万円)
メリット 60〜64歳に無年金の期間がない/早く現金化できる 毎月の年金がずっと約3.6〜3.8万円厚い
デメリット 減額が一生続く/障害年金の請求不可などの制約(第1章) 60〜64歳の生活費を給与・資産で用意する必要
表1:ケースAとケースBの比較。
※この表は2026年時点の制度と我が家の仮定にもとづく額面の単純比較です。税・社会保険料は含みません。

一点、はっきりしないところがあります。繰上げ後に働いて増えた分(60歳以降の加入期間分)に、24%の減額率がかかるのかどうかです。日本年金機構のサイトで明示を確認できませんでした。本試算では「かかる(0.76倍)」前提で計算しています。ここが違えばケースAの65歳以降の金額は少し増えます。


8. 働きながら受け取ると、月額はこう動く

年金の「月額」が年齢とともにどう動くかを図にしました。ポイントは、65歳以降も働くと在職定時改定で毎年少しずつ増えること。「もう年金は増えない」わけではありません。加給年金は両ケースに同額付くので、下の図の金額には含めています。

0 5万 10万 15万 20万 ケースA(60歳繰上げ) ケースB(65歳からふつうに受給) 9.88 0 60〜65歳 14.87 18.45 65〜70歳 15.60 19.41 70〜74歳 12.07 15.88 74歳〜 BはAより毎月 約3.6〜3.8万円 多く、差は生涯続く
図1:年金月額の推移(加給年金を含む・額面)。
※この図は2026年時点の制度・仮定にもとづく額面の単純比較です。税・社会保険料は含みません。

74歳で棒がガクッと下がるのは、加給年金(約3.53万円)が終わるからです。それでもケースBはケースAより毎月およそ3.6〜3.8万円多く、その差は一生続きます。24%の減額を一度選ぶと、あとからは埋められません。


9. でも「月額」だけで比較するのは危険

月額が多いことと、それまでに受け取った合計額(累計)が多いことは別の話です。ケースAは60歳から5年も先に受け取り始めているので、累計額ではリードしています。ケースBが月額の差でそれを追い抜くには時間がかかります。

2,000万 4,000万 60 65 70 75 80 85 90(歳) 年金だけなら約78歳で逆転 ケースA(60歳繰上げ) ケースB(65歳からふつうに受給)
図2:累計受給額の推移(年金本体のみ・額面)。
※この図は2026年時点の制度・仮定にもとづく額面の単純比較です。税・社会保険料・年金額の改定・物価・運用益は考慮していません。

我が家の仮定で単純計算すると、年金だけの累計が逆転するのはおおよそ78歳。それより前に亡くなればケースAの累計が多く、長生きすればケースBの累計が多くなります。

ここまでは図2、つまり年金本体だけの累計比較です。ここからは別の計算になります。ケースAには「60〜64歳に受け取った年金を投資に回す」という手があり、その約571万円を加味すると、分岐年齢は大きく動きます。60〜64歳の年金(月9.88万円)を年5%で運用すると、5年で額面約672万円、税を引くと約571万円(税の内訳は第11章)。この約571万円を——

  • 65歳から取り崩して生活の足しにする → 逆転は78歳前後(図2の「約78歳」とは別の計算ですが、たまたま近い数字になります)
  • 取り崩しながら5%で運用を続ける → 逆転は86歳前後
  • 70歳まで手をつけずに運用だけ続ける → 逆転は100歳を超える

つまり「取り崩すかどうか」で結論がひっくり返ります。年5%はあくまで仮定で、増えている保証はありません。「何歳まで生きるか」も誰にも分かりません。この数字だけで損得は決められません。


10. 65歳の100万円と、80歳の100万円は同じ100万円じゃない

ここまで「何歳で逆転するか」を見てきましたが、同じ100万円でも、受け取る年齢によって価値が変わります。理由は3つあります。

① 時間価値。 65歳で受け取った100万円を年5%で15年運用すると、100万円 × 1.05¹⁵ ≒ 約208万円。同じ100万円を80歳で受け取っても、もう増やす時間がほとんど残っていません。早く受け取ったお金には「働く時間」がついてきます。

② 使用価値。 厚生労働省によると、令和4年の健康寿命(日常生活に制限なく過ごせる期間)の平均は男性で72.57歳、女性で75.45歳です。前の章の逆転年齢(78〜86歳、運用を続ければ100歳超)は、その健康寿命を過ぎたあとにやってきます。65歳の100万円には「元気に使える時間」がついてきますが、80歳の100万円にはついてこないことが多い、ということです。

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「平均寿命と健康寿命」

③ 代替不可能性。 お金は、あとから働いて作り直せます。でも「その年齢でしかできない経験」——体力のいる旅行、子どもと過ごす時間——は、あとから作れません。

ただし、逆の見方も同じくらい大切です。80歳の100万円は、価値が低いのではなく、用途が違うだけです。それは医療費・介護費に充てるお金であり、「長生き」という読めないリスクへの備えとして機能します。言いかえれば「使えないお金」ではなく「使わずに済めばいいお金」。しかも健康寿命はあくまで平均値で、自分が何歳まで動けるかは事前には分かりません。72歳で動けなくなる人もいれば、80代で山に登る人もいます。

私のケースに当てはめると、どうでしょう。我が家は60〜65歳に年収700万円の給与があるので、「動けるうちに使う現金」は給与でまかなえます。だから「時間価値・使用価値」を理由に年金を繰り上げる、という理屈は、私の場合は筋が通りにくいのです。

繰り返しますが、「だから繰上げが得」という話ではありません。給与が下がる人や健康に不安のある人なら、この理屈は当てはまります。自分の健康・資産・使う予定で判断する話です。


11. 繰上げた年金を投資に回すって、実は何をしていることになるのか

「繰り上げて早くもらって、その分を投資に回せばいい」——よく聞く考え方です。でも、これが具体的に何と何を交換しているのか、分解してみます。

手放すもの:終身で受け取れて、物価に合わせて改定され、長生きするほど有利になる「月3.6〜3.8万円」(しかも減額は一生)。

得るもの課税後で約571万円の、期限があって値動きする資産。5年後に増えている保証はありません。

ここで見落としやすいのが税金です。繰り上げた年金は雑所得(公的年金等)で、65歳未満の公的年金等控除は最低60万円。年118.6万円 − 60万円 = 約58.6万円が、年収700万円の給与に上乗せされて課税されます。所得税20%+住民税10%の帯にかかるので、年およそ17万円、5年でおよそ85万円が先に税金で消えます。だから「額面672万円」が「税引後およそ571万円」に目減りするわけです。

そして、いちばん大事な指摘。投資に回すだけなら、繰り上げなくても給与から積み立てればできます。 年収700万円あるなら、年118万円くらいは給与からでも積み立てられるはず。「繰上げ+投資」が意味を持つのは、給与からはどうしても捻出できないが、年金でなら受け取れるという人に限られます。

対称性の話も一つ。早く亡くなった場合、投資に回した資産は家族に残ります。一方、年金は本人が亡くなれば終わります(配偶者に出る遺族厚生年金は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3で、満額ではありません)。

出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」

つまり「繰上げ+投資」は早く亡くなるリスクには強く、長生きするリスクには弱い。通常受給や繰下げはその逆です。「繰り上げて投資すべき」とも「すべきでない」とも言えません。自分が早世と長生き、どちらのリスクをより重く見るか、という話です。具体的な投資商品は、ここでは挙げません。


12. 60歳から年収700万円で働くなら、話は変わる?

ここで「働き方」という変数が入ります。

早く受け取る側は「受け取ったお金を生活費や資産形成に回せる」(取り崩しを抑える、NISAで運用に回す)。待つ側は「受け取りを遅らせた分、年金額そのものを増やせる」(終身で受け取れ、物価に応じた改定もある。長生きへの保険として月額を厚くする)。

どちらが正しいという話ではなく、両方とも筋は通っています。はっきりしているのは、年金単体で損得を計算しても答えは出ないということ。「給与」「年金」「資産」の3つをまとめて見ないと、自分の正解は見えません。

老後にいくら必要かを我が家の数字で逆算した話は、別記事にまとめています。受け取り方を考える前提として、こちらが先かもしれません。

老後資金、結局いくら必要?マシマシおやじが「逆算」してみた


13. 60歳で会社員を辞めて、ゆるく働くのもあり?

「60歳以降も働く」といっても、フルタイムとは限りません。週5→週2〜3日、1日8時間→短時間勤務、責任の重い仕事→負担の軽い仕事、収入最大化→自由な時間を優先。選択肢はいくつもあります。給与が下がれば、在職老齢年金による調整も受けにくくなります。

「業務委託なら在職老齢年金の対象外」という説明も見かけますが、契約の形や社会保険上の扱いで変わるので個別確認が必要です。ひとくくりに「対象外」とは言えません。また厚生年金から外れる働き方を選ぶと、その後の年金額の増え方が変わる点も見落としがち。会社員として厚生年金に入り続ければ老齢厚生年金は増えますが(前述の在職定時改定)、外れればそこは止まります。目先の負担と将来の年金をてんびんにかける必要があります。


14. 完全リタイアより「ゆるく働く」という選択

ここは制度から少し離れます。

僕は前から「何もしない完全リタイアより、何かしているほうが自分に合う」と感じています。だから資産形成の目的も、「仕事を辞めるために資産をつくる」から「仕事を選べるようになるために資産をつくる」へと言葉が変わってきました。

積立が進んでいれば、「生活費のために働く」から「生活リズムや人とのつながりのために、無理なく働く」へと働く理由を切り替えられます。年金の受給開始をいつにするかも、突きつめれば「その切り替えをいつ・どうやるか」という話なのだと思います。


15. 48歳の今、僕ならどうする?

現時点の考えを3パターンで整理します。

  • パターン1:60歳から繰上げ受給。無年金の期間はゼロだが、減額が一生続く。浮いた分を投資に回すかどうかで結論が変わる。
  • パターン2:65歳からふつうに受給(繰上げも繰下げもしない)。60〜64歳は給与と資産でしのぐ。
  • パターン3:65歳から老齢厚生年金+加給年金を受け取り、老齢基礎年金だけ70歳まで繰下げる(第6章の方法)。

今の第一候補はパターン2〜3寄りです。「60〜65歳は年収700万円の給与があるので、急いで繰り上げる必要はない → 65歳でふつうに受け取り、老齢基礎年金を70歳まで繰下げるかどうかは、そのときの資産と健康で判断する」。

ただしこれは12〜17年先の話。そのころには資産額も給与も働き方も健康状態も妻の年金も、制度そのものも変わっています。今から一つに決め打ちせず、選択肢を残しておくことがいちばん大事だと考えています。


マシマシおやじの実体験|「逆算」で年金と向き合った

年金を真剣に考え始めたきっかけは、老後資金と子どもの学費が気になって、必要額を「逆算」するようになったことでした。

投資を始めたのは40歳。当時は「年金なんてどうせ当てにならない」と思って先延ばしにしていました。トランプショックのときは評価額がマイナス100万円になりましたが、私はそのまま売らずに持ち続けました。今回のわが家のケースでは、結果的にはそれで助かったというだけの話で、含み損でも売るなという意味ではありません。

逆算して分かったのは、「年金ゼロ」を前提にするのはやりすぎだし、「年金だけで安心」も無理があるということ。今は「年金は年金として当てにしつつ、足りない分は自分の積立で埋める」というスタンスで、NISAでの積立を続けています。iDeCoはまだで、住宅ローン控除が終わってから検討するつもりです。

何から手をつければいいか分からない段階の人は、まず全体の順番を確認するところからだと思います。

40代からの新NISAロードマップ|投資8年のおやじが順番を全部まとめた


16. まとめ

  • 年金は原則65歳。60歳からの繰上げは1か月0.4%・最大24%の減額が一生続く。減るのはお金だけでなく、障害年金の事後重症請求や寡婦年金、65歳までの遺族厚生年金との併給といった「権利」も失う。繰下げは1か月0.7%・最大75歳までで、70歳なら42%増。いずれも2026年時点の数字。
  • 働きながらでも年金は受け取れる。調整対象は老齢厚生年金だけで、支給停止調整額は令和7年度51万円→令和8年度65万円。老齢基礎年金は対象外。全額支給停止になると加給年金も止まる。65歳以降も働けば在職定時改定で毎年10月に年金額が増える(「働いても増えない」は誤解)。
  • 妻が年下なら加給年金(2026年度・年423,700円=月約3.53万円、65〜74歳)の対象になる可能性がある。繰上げても65歳から満額で、60〜64歳は出ない。繰上げ減額・繰下げ増額の対象外。妻が昭和41年4月2日以後生まれなら振替加算はゼロで、74歳で加給年金が終わったあとの穴埋めはない。
  • 我が家の試算(60〜65歳は年収700万、65〜70歳は嘱託で年収350万)では、ケースB(65歳受給)はケースA(60歳繰上げ)より毎月およそ3.6〜3.8万円ずっと多い。年金だけの累計逆転は約78歳。ただし繰上げで浮いたお金(税引後約571万円)を取り崩すか運用し続けるかで、逆転は78〜86歳、運用継続なら100歳超まで動く。取り崩すかどうかで結論が変わる。
  • 同じ100万円でも受け取る年齢で価値が変わる。健康寿命の平均(男性72.57歳・令和4年)より、累計の逆転年齢(78〜86歳)のほうが後に来る。ただし80歳の100万円は価値が低いのではなく用途が違い、医療・介護費として長生きリスクへの備えになる。健康寿命は平均値で、自分が何歳まで動けるかは分からない。「だから繰上げが得」という単純な話ではない。
  • 年金単体の損得ではなく、給与・年金・資産の3つ、そして「早く亡くなるリスクと長生きするリスク、どちらを重く見るか」で考える。決め打ちせず選択肢を残す。

数字はすべて額面の単純比較で、税・社会保険料・毎年の改定・物価・運用益は含んでいません(第9章・第11章の税・運用の話は前提を置いた概算です)。個別の見込み額は、ねんきん定期便・ねんきんネット・年金事務所で必ず確認を。資産の取り崩しや投資は、最終的にはご自身の判断と責任で行うものです。この記事は特定の受け取り方をおすすめするものではありません。

最後に、あなたに聞いてみたいです。あなたなら、60歳から年金をもらいますか? それとも、65歳まで待ちますか?

管理人

管理人

資産マシマシおやじ

都内会社員・48歳

  • 📅 40歳から投資スタート(投資歴8年)
  • 👨‍👩‍👧‍👦 子供2人(8歳・5歳)・住宅ローンあり
  • 💰 世帯年収:約650万円
  • 📊 投資手法:NISA・高配当株
  • 🏄 趣味:サーフィン・ラーメン食べ歩き
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